こんばんは。オガサワラです。
読了後爽やかな気分になれるSF小説「マレ・サカチのたったひとつの贈物」を読んだので感想とか書きます。
あらすじ
「量子病」に冒され、世界中を跳躍し続ける坂知稀。神のサイコロ遊びなのか、一瞬後の居場所すら予測できず、行き先も滞在期間もバラバラ。人生を“積み重ね”られない彼女が、世界に爪痕を残すためにとった行動とは…。
量子病とは
小説中に出てくる奇病なのですが、なんと説明したらいいのか…、いつ世界のどこへと飛ぶかわからない病です。
南極から北極まで世界のありとあらゆる場所、どこへ飛ぶかもわからないという奇病。
とはいえ、どうやら法則性はあるようで人がいるところに飛ぶということが分かっています。
主人公はこの量子病に犯されている"マレ・サカチ"という女性なのですが、これが、こんな奇病を患っているにも関わらず朗らかでとても魅力的な人物像です。
永遠の楽土
死というのは人間にとって最大のテーマかもしれません。
《人生を“積み重ね”られない彼女》とあらすじにありますが、彼女は量子病で飛ぶたびに解けて、まるで生まれ変わるようにまた結ばれて、また解ける、という風にまるで生と死を短いスパンで繰り返しているようにも思えます。
それは、ある意味、輪廻転生の苦しみにも似ているようにみえます。
人の死にたくないという想いはいつか《生物は死ぬ》という原理すらも飛び越えるのではないかと思えてきます。SF作品を読んでいると確かに描かれている
「マレ・サカチのたったひとつの贈物」に登場する《永遠の楽土》というワードはそんな死を恐れた人間の生み出した言葉であり技術です。
SF作品ではよく描かれるアプローチですが、ネットに移住して人格を情報化してしまえば死なないということです。
この作品からは死なない世界に対するアンチテーゼを感じました。
この先、もしかしたら本当に到来するであろう誰も死なない世の中はユートピアなんではなくてディストピアなのかも知れませんね。
主人公マレ・サカチの選択はどうぞ自分の目で、爽やか気分になれること請け合いのSF小説です。
参考文献から読み解く
「マレ・サカチのたったひとつの贈物」の最後に参考文献が載っていたので、本書を読み解くために各書リンクしておきます。
大 栗 先生 の 超弦理論 入門
量子力学 の 哲学
「 量子論」 を 楽しむ 本
非 線形 科学 同期 する 世界
資本主義 の 終焉 と 歴史 の 危機
㈱ 貧困 大国 アメリカ
スノーデンファイル
モナドロジー 形而上学 叙説
二都物語
不均衡 進化論
まとめ
今回は「マレ・サカチのたったひとつの贈物」の感想を書きました。
爽やか気分になれるSF小説って個人的にはあまり思い浮かびません。
そういう意味でも稀な作品なのではないでしょうか。