こんばんは。オガサワラです。
藤本タツキさんの新連載『チェーンソーマン』が始まったので、藤本タツキのデビュー作にして代表作『ファイアパンチ』を読み返しました。
『ファイアパンチ』ラストに関しては賛否ありますが…控え目にいって面白い!!という訳で今回は漫画『ファイアパンチ』の紹介だったり元ネタも考察していきたいと思います。ネタバレ気にされる方はご注意ください。
ざっくりあらすじと概要

【出典:ファイアパンチ】
氷の魔女の力により雪と氷に覆われ深刻な食料・資源不足に陥った世界。
物語の主人公であるアグニは、そんな世界の小さな村で、貧しいながらも妹のルナと共に平和に暮らしていました。
この世界には祝福者と呼ばれる、異能力者がおり、それは旧人類が残した、まるで魔法のような力です。
アグニは再生の祝福者で、驚異的な再生能力を持っています。同じ能力を備えるルナよりも、再生力が強く手足を切っても一瞬で再生してしまう程です。(ちなみにルナの方は手足を切ると再生に1時間ほど掛かる)
ところで、何故雪と氷に覆われた過酷な世界で、小さく貧しい村が、細々とでも延命できるのか、これには秘密があり、アグニは自分の手足を食料として、自主的に村人に差し出していたのです。この猟奇的な事実を除いては、村の生活は穏やかでしたが、ある日、その平和は炎の祝福者であるドマの来訪により崩れさることになります。
ドマは自分が率いる軍の物資が枯渇した為アグニ達の生活する村を訪れたのですが、村から食料を略奪しようとしたところ人肉を発見します。そして、人の肉を喰らい生きている村を酷く嫌悪し村に火を放ってしまうのです。
ドマの手の平から放たれる炎は対象が朽ちるまで燃え続けるという特殊なものでした。
村とそこに暮らす人々を消し炭にしても消えない炎が1つだけありました。驚異的な再生能力を持つアグニだけは燃やし尽くすことが出来なかったのです。
アグニの肉体は燃え尽きる前に再生を繰り返すために常に燃え続けるようになりました。こうしてアグニは対象が朽ちるまで消えない炎を纏った不死身の復讐者となりました。
的な話で、中々にハードな復讐譚なのですが、シンプルな復讐譚と思いきや物語は二転三転で、一筋縄ではいかないものとなっています。
私的感想
まあ本当ね、この漫画、面白いです。
特に序盤が良い。
で、その最大の理由はトガタが狂言回しとして魅力的だったからだと思います。なので後半トガタが退場してからは、どうしても失速した感が否めないです。
悪い言い方をすると、物語のスケールは大きくなったけど、小ぢんまりしちゃった感じ。
とはいえ、つまらないという訳ではなく、真面目になったとでも言いますか、とにかく、めちゃくちゃする奴が1人くらいは欲しいところではありました。
もう少し具体的に考えてみると、物語の前半のテーマは演じるです。人は誰かを演じることで生きていけるという強烈なメッセージ性が前半にあります。その集大成がトガタ。
で、トガタが退場してからはというと、主人公のアグニが自覚的に演技を始めます。まあそれはもう演技というか嘘なのですが、その嘘がないと生きていけないような精神状態に陥ります。でもそれは結局、アグニがこれまで歩んできた人生と何も変わらないのですが、決定的な違いは、アグニは既に自分自身を騙すことが出来なくなってしまっていた点です。
このお陰で後半は、鬱々しい展開が続きます。それはそれで良い感じなのですが、ラストは超展開でした。
ちなみに余談になりますが、ドマが盲目的に信仰していた旧人類の残した炎を操る男の映像。
ドマからすると、この炎を操る男は神の使い、そのものであり、彼の目指すべきところであり、彼の人格に大きく影響した人物。
なのですが、実はただの映画で炎を操る男も俳優がただ演じていただけであったという下り、これ実は『アンドロイドは電気羊の夢をみるか』でマーサー教と共感ボックスのエピソードが割りとまんまです。気になる方はぜひ読んでみてください。
恐らく、この辺りがドマのエピソードの元ネタとみて、ほぼ間違いないのではないかと。
まあそんなこんなで『ファイアパンチ』めっちゃ面白いのでぜひ読んでみてください。